“普通ではない者たち”の緊迫サスペンス「消えた天使」
2007-08-02 12:30

怪物と戦う者は、自分もその過程の中で怪物にならぬよう気をつけよ――
性犯罪者を18年間監視してきた監察官を描いたサイコ・サスペンス「消えた天使」の冒頭で語られる言葉です。
この言葉は、まさに本作を象徴してます。
監督は、出世作「インファナル・アフェア」(2002)で主人公2人(“マフィア組織に潜入した刑事”と“警察に潜入したマフィア”)それぞれの二面性を描いたアンドリュー・ラウ。
彼がハリウッド進出第一弾として選んだ作品も、二面性を持った主人公が登場します。
その二面性は、性犯罪者や事件そのものというよりは、それらに関わった監察官(リチャード・ギア)がその深い闇を覗いてしまったがために抱いてしまう葛藤という形で表現されていきます。
普通に考えても、警察やこのような監察官は、一般人より“凄いもの(事件)”を見聞きしているわけで、一歩間違えば心を病み、危うい状態になる可能性を秘めている職業ですよね。
しかも、性犯罪者が犯した罪は見るもおぞましい内容で、それに触れた結果、普通ではいられなくなるのもよくわかる。
この監察官の二面性がどのように表現されているかが見どころと言えます。
そして、暴力反対を訴えるためには暴力を描く必要が出てくるのと同様に、ある事件を調べていくにつれ現れる一般世界とは異なる世界の描写が割とグロくて痛い・・・(けど、映るのは一瞬なので大丈夫。血がぶしゅっと出たりするものではなく心理的なもの)
いかにも一般世界と隔絶された薄暗いSM小屋で、人体を鉤で吊し上げるステラークのパフォーマンスを模したような場面や、“人体の切断写真”を扱った雑誌など、直視したくないものがサッと出てきます。
その一方で、フツーのスーパーマーケットで前科持ちの性犯罪者が働いているといった静かな不安も含みながら、事件の核心に近づいていく。
全体的にやや露出オーバー気味で撮られたざらついた質感の画調が、異なる世界に踏み込んでいる感じを生み出している。
個人的には、随所に入る賑やかしの映像テクが気になりましたが、ハリウッド進出第一弾なだけに彼にファイナル・カットがあったのかどうかわからないので何とも言えません(でも、「デイジー」(2006)でもいろいろ入っていたような・・・)。
ともあれ、
“普通ではない者たち”が“普通ではない事件”を起こし、それを追う“普通ではいられなくなった”監察官がどのような行動を取ってしまうのか――は観てのお楽しみ。
緊迫演出が続くので、観終わった後は結構疲れると思いますよ。
■「消えた天使」
8月4日より有楽町スバル座ほか全国ロードショー
公式サイト









